とうみどわくわくクッキング(仮)
※書きかけ供養。そのうち続きを…
殺し屋という職業は、基本的に一度の依頼で数百万から一千万単位の金が手に入る。その分、ハイリスクなのは当然で、肉体や精神は簡単に磨り減っていく。そのためプロの殺し屋は次の依頼も万全な体制で活動できるよう、インターバルを長めに取ることが多い。人によっては殺すこと自体が快感で、一番の楽しみが殺人な人間もいるらしいが僕は違う。僕は人を殺すことを生業としている以外は、ごく普通の生活を送っている。変わらないことは心に平穏をもたらす。
だから今日も一日をルーティンに沿って行動しようとしていた。
「おっ、これどうなってるんだ? なあなあ、禅も見てみろよ、これ凄いぞ」
――ある存在がいなければ。
声のする方向に顔を向ければ、一人の男が我が物顔で座っている。視線がテレビに釘付けなその男は、服装や身だしなみが雑で、なんと汚れたスニーカーのまま室内にいる。御堂なら絶対に許せない所業だが、それを指摘するのは諦めていた。
なにしろ、男の体が透けているのだから。
「……邪魔しないで大人しくしておいてくださいよ。今から買い出しに」
「なら丁度いいな。ほらほら、見てみろって」
御堂の声を遮って、東馬が早く来いと手招きをする。この探偵、かなりしつこい。おそらく今無視をしたら、一日の予定を全て壊される。確信ではなく経験だった。うんざりしながら、諦めて液晶に目を遣る。
『わあっ、これ、中身アイスクリームじゃないですか!? 外は熱々なのに中はヒンヤリ冷たくて美味しい~』
「なんだ、ただのグルメ番組じゃないですか」
これのどこがわざわざ呼び止められるほどの物だろうか。タレントだろうか、女性が野外で黄金色をした天ぷらを食べてレポートしているだけだった。衣が確かに良い揚がり方をしているとは思ったが、それだけだ。
「いやいや、不思議に思わないか? なんで油で揚げてるのに、アイスが溶けないんだよ」
そこか。まさか、幽霊から作り方を突っ込まれるとはテレビ局も思っていなかっただろう。
「普通に考えて、溶ける前に引き上げてるんじゃないんですか」
「……禅、熱した油って熱いんだぜ? 地獄釜の事件の時に俺は実感したよ。あの時、逃げ遅れてたら俺も全身火傷になるところだったからな」
「あなたの体験談には興味ないですけど、実際にあるんだからできるんでしょう」
「いーや、実証してくれないと納得できないね」
また東馬が面倒なことを言い始めた。これは嫌な予感しかしない。予防線の意味を込めて、一つ言い添えておくことにした。
「実証って、言っておきますが僕は店になんか行く気はありませんからね」
「別に店になんか行かなくても確かめられるだろ」
まさか。東馬の目が面白いものを見つけた少年のように輝いている。その瞳を認識した瞬間に、今すぐここから逃げ出して耳を塞いでしまいたくなった。しかし、全速力で走っても、電車に乗っても、おそらく海外へ脱出したとして。
――こいつはどこまでも憑いてくる。
「なあ、禅。作ってみてくれよ」
東馬は心底楽しそうに、ニヤリと笑みを浮かべた。