花芹SSまとめ
ワンシーン書き切りつまみ食い。
「嫌いじゃないよ」
(原作設定)
「嫌いじゃないよ、花鳥くんのことは」 ​ 嘘ではない。ただし、この言葉が全てを伝えているとは言い難い。「嫌い」の反対は「好き」なのだろう。だけど「本当は好きでもない」と言ったら、目を輝かせている暗黒破壊神はどんな顔をするのだろうか。 「ゲシュテーバー……俺もゲシュテーバーのこと大好きだぞ!!」 「大好きとは言ってないじゃん! ……なんでそうなるんだよ」 ​ 花鳥くんにとって、この世界は「好き」と「嫌い」の二つだけで出来ているのか? そんな訳ないな。暗黒破壊神の世界はどうせ中二病と現実の都合の良いとこだけで出来ている。 「じゃあ……、『ミゲル、あ・い・し・て・る』ってこと?」 ​ キャーと叫びつつ、真っ赤な頬を押さえている男子高校生って誰が見たいの。少女マンガのヒロインかよ。それにしても古い気もするし。 「ねえ、勝手な妄想で照れないでくれる? なんで『嫌いじゃない』=『好き』になるのかわからないんだけど」 ​ 「どちらでもない」という選択肢を意図的に無視しているのか、それともポジティブすぎて考えたことがなかったのか。前に最上さんが何かを言ってた気もするけど。つい気になって聞いてしまった。 「だってゲシュテーバーは、はっきりと物を言うタイプだぞ。普通なものは『普通』って言うだろ。ということは、『嫌いじゃない』=『普通以上』=『仲良しフォーエバー!』ってことだな」 ​ ん? 今なんかひどい論理の飛躍があったような。 「それに照れ屋さんだからなー、ゲシュテーバーは」 ​ 俺のことが好きでも素直になれないんだもんな。俺はゲシュテーバーの一番の理解者だからわかってやれるけどー。えへへっ。口元を隠しながら、チラチラとこちらを見てくる。 ​ ……誰が。誰が花鳥くんのことが好きだって? 何の冗談だ。 「僕は、絶対にお前のことなんか好きじゃないからなああ!」 「ちょ、ゲシュテ、揺さぶらないで、うぎゃっ」 ​ あまりに想定外のことを言われて、胸元を掴んで前後に振ってしまった。ああもう、花鳥くんに好き勝手言われると無性に腹が立つ! 何様なんだよ、暗黒破壊神! 「芹くん、そこまで言われても嫌いって言えないんだー。相当花鳥に絆されてるよね」 ​ ゲラゲラと笑い声が響く午後の教室のことだった。